熱盛りという不思議で伝統ある蕎麦
お蕎麦には熱盛りというものがある。
一般的には茹でた蕎麦を水締めして再度熱湯に通す、いわゆる熱いもり蕎麦。
これを溶き卵に注いだ熱い汁に浸けて頂く。
関西圏、特に大阪では品書きにその名が多い。
また関東でも「せいろを湯通しで」と頼めば出してくれるお店がある。
今回は熱盛り蕎麦特集。
熱盛りといえば堺にある専門店「ちく満(ま)」があまりにも有名。
創業約300年とも言われる老舗蕎麦店なのです。
白木の蓋付き蒸籠で出される蕎麦はまさにミスターせいろ蕎麦と呼べるでしょう。
では何故わざわざ熱いもり蕎麦なのか。
お蕎麦の香りは繊細なので冷たいと隠れてしまい、口に入れ噛みしめると鼻孔の奥に現れる恥ずかしがり屋。
それを温めてやることでモワッと香が広がり、冷蕎麦とは一味違う美味しさを楽しめるのです。
栄養価の高いお蕎麦を温かくすることで軟らかく滋味有るものにしたのかも知れません。
その味を引き立てるのが鶏卵。もちろん玉子無しのお店も有るのですが基本はこれ。
そして最大のポイントが蕎麦汁なのです。
というのも熱盛り蕎麦は麺・汁・玉子が渾然一体でなければなりません。
甘味が過ぎるとしつこくなり、辛すぎれば玉子の円やかさがスポイルされる。
この塩梅が好みを分けるのではないでしょうか。
同じ堺にある「ちく千」や熊取の「よしの」はこの塩梅をより良く活かしていると思う。
しかも「よしの」ではお店が絶妙に仕上げた汁を出してくれるのです。
また鴨せいろを湯通しで出すお店が和歌山の更科本店。
鴨汁なので卵は付きませんが、熱々のお蕎麦を葱タップリの鴨汁で啜り上げれば、寒い冬でも体がホカホカなのです。
ちく満に似ている京都竹邑庵太郎敦盛も葱タップリの汁で頂く。
最後に蕎麦湯、またこれが一味違います。
食べ終えた汁に熱々の蕎麦湯を注ぎ入れると、フワッと玉子の花が咲いてまろんとした味わい。
月見蕎麦の汁か、半熟玉吸いになるかは汁と蕎麦湯の温度が分かれ道 (^0^)
蒸し器を使う菓子店や薬店では昔お蕎麦を出していたとか、蕎麦は足が早いので蒸して出したという説もあり、いずれにせよ熱盛りの基礎はその頃に出来たのでしょう。
今は器の違いで呼び分けられる事の多いお蕎麦
蒸籠で蒸された事から呼ばれる「せいろ蕎麦」。
お店の方が言った一言。
「子供の頃からざる蕎麦と言えば熱盛りやった」
これが浪花の蕎麦文化。
近いうちに釜揚げ蕎麦をお伝えしようと思います。
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