カテゴリー「お蕎麦について」の記事

2019年7月21日 (日)

お蕎麦屋さんの酒肴ってどんなもの ?

江戸蕎麦文化の特徴は関西ではあまりなじみが無かったお蕎麦屋さんでお酒を飲むという事 。

そうです 、 江戸時代のお蕎麦屋さんはお酒を飲む処で 、 お蕎麦を食べる前にお銚子を一・二本ほど頂くのが当たり前だったのです 。

このお酒を 蕎麦前 と言います 。


蕎麦前のお供にはお蕎麦に使う具材を利用した簡単な酒肴が出されました 。
定番は板わさ(蒲鉾)や焼き鳥 ・ 卵焼きに焼き海苔など 。

今は時代と共にお蕎麦屋さんの酒肴も豊富になり 、 割烹かと思う程のお店もできています 。
  が  、 あくまでもお蕎麦が主役ですからね 。


さあ 、 それではお蕎麦屋さんの酒肴をご紹介していきましょう 。

まずは全国ほぼどこのお店でも見かける定番 板わさ 。


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いわゆる蒲鉾で定番中の定番といえる一品 。
切り分けた板蒲鉾を山葵で頂くものです 。

月見蕎麦や卵とじ 、 けいらんなどに使われる卵は卵焼きに 。


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関西では出汁でのばして焼かれ 、 大根おろしと醤油で食べるのが多いが 、 関東では砂糖や味醂が入る結構甘めの仕上がりで 、 卵焼きとか厚焼き卵と呼ばれる 。

定番ではあるのですが町のお蕎麦屋さんではあまり見かけることの無い焼き味噌


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しゃもじ型の木べらに塗られて焼かれるものが多いのですが 、 杉板などに塗られたものもあります 。
関東では赤味噌系 、 関西では白味噌や合わせが多いようです 。

天麩羅盛り合わせ
天麩羅ちらしや天ちらなどとも呼ばれます 。


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最近では頭から尻尾の先まで食べることのできる天使のエビを使うお店もチラホラ出てきましたが 、 浅草の並木やぶそばではこんな天ぷらが出されます 。



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ここからは少し専門店での定番かもしれません 。

江戸名物の一つに浅草海苔が有ります 。
海苔を炙って頂くと磯の香が香ばしく広がる のが焼き海苔


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関東では海苔箱という専用箱に入れて出す店が多く 、 海苔箱の下部に小さい炭火種を入れることで 、 海苔が湿気るのを防ぐという工夫がされています 。


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蓋を開け一枚食べるごとに蓋をして 、 食べ終わるまでパリパリの海苔を楽しむことが出来るという優れものなのです 。

とりわさもお蕎麦屋さんの一品です
日本橋やぶ久では鶏の下にお蕎麦が入っていてお得感満載 。 (*゚∀゚)


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ささみの淡泊さを補う返しに添えられた山葵がアクセント 。

そして私が大好きな神田やぶそばのわさび芋 !!!
箸で掬うと小鉢の中身が丸々持ち上がってくる程の粘り 。


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お箸で切り分けるようにして頂く感じなのです 。

さあいよいよ鴨のご紹介 。


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お品書きにあればほぼお願いする鴨ロース煮は 、 ジューシーなのもあればハムみたいなものまでお店の個性が出る一品 。

そして 大 大 大 好きな鴨塩焼き


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やぶそばでは合鴨の塩焼きなので合い焼きと呼びます 。
また鴨と言えば関西では珍しい酒肴


       鴨 抜 き


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これは鴨南蛮蕎麦からお蕎麦を抜いたもので 、 鴨肉と葱が蕎麦汁に入るだけ 。
確か並木藪蕎麦ではメニューに無いのですが 、 お願いすれば出してくれます 。

蕎麦寿司は寿司飯の代わりにお蕎麦を使う巻き寿司 。


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ほんのりとお酢が香るお蕎麦がキュウリや卵と共に海苔の磯の香と相まって美味しい一品なのです 。

さていよいよ終盤 。

練り味噌です 。


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蕎麦米や蕎麦粉を混ぜると蕎麦味噌と呼ばれたりしますが 、 これをチビチビ舐めるとお酒が進む大変恐ろしい一品 。

そして焼き鳥は意外にもお蕎麦屋さんの定番です 。


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室町砂場はタレと塩を選べるのですが 、 大阪屋虎ノ門砂場はこだわりのタレのみ 。
とっても美味しいですよ !

定番とは少し違うのですが 、 こんなお酒のお供も有るのでご紹介しておきます 。


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西浅草おざわで出される卵黄の味噌漬け 。


これ絶品です 。


大阪などでも出しているお店が有りますが 、 おざわの味噌漬けは絶妙のバランスに仕上げられた甘めがとっても素敵 。
これをチビチビ舐めながらお酒を頂くと 、 ある意味練り味噌以上に恐ろしい酒肴かもしれません 。

最後に朝8時から営業する根津の手打ち蕎麦屋さん鷹匠で出される盛り合わせ



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卵焼きや板わさに練り味噌など7種の酒肴が盛られています 。
朝から二・三合は飲めますよ!!

さて 、 いかがでしたでしょうか 。
お蕎麦屋さんには素敵な酒肴がそろっています。
機会があれば蕎麦屋酒を楽しんでみるのも粋なものかもしれませんね 。
ただしあくまでも居酒屋さんではありませんので節度を守るようにしましょう 。


                    お蕎麦屋さんでは粋さが大事ですからね  (^0^)


それでは今日はこの辺で 。

次回はお蕎麦のコシについてお話ししたいと思います 。

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2019年5月26日 (日)

おかめ 、花巻 、あられって ?  お蕎麦の名前2

お蕎麦屋さんのメニューで 、 温かいお蕎麦の欄に並ぶ品々の中に 、 これってどんなお蕎麦か想像が付かない名前があったりしますよね 。

 

今日は前回の冷たいお蕎麦に引き続き温かい汁蕎麦の名前についてお話しします 。

 

月見や天麩羅、山菜に鰊(にしん)などはその名の通り見ただけでどんなお蕎麦か解りますが 、 名前だけではなかなか解らないのが次のお蕎麦たち 。

 

とじ ・ けいらん ・ おかめ ・ 田舎 ・ かちん ・ ハイカラ ・ おぼろ ・ 花巻 ・ あられ ・ 小柱 ・ なんば ・ 南蛮 ・ 巣ごもり 。

 

 

いったい ・ ・ ・ これらはどんなお蕎麦なんや !

 

 

      全部解る人はかなりの蕎麦好き

 

 

それでは一つ一つ説明していきましょう 。

 

 

まずは とじ 。 中でもこれが一番解りやすいかと 。

 

その名の通り溶き卵でお蕎麦をとじた玉子とじ蕎麦 。
フンワリ卵のまろみが出汁と相まってこれがなかなか旨い !


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少量の七味を掛けて頂くと 、ピリッとアクセントが効いてこれが何ともいえないのだ 。


次ぎに けいらん 。



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けいらんとは餡かけの玉子とじ蕎麦のことで 、 いつまでも熱々でおろし生姜と共に冬場の冷え切った体に持って来い !! そんなお蕎麦 。


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おかめ は古くから神楽や狂言などで知られるユニークなキャラクターおかめ・ひょっとこのおかめの顔を 、 蒲鉾や海苔 ・ 椎茸などで丼の中に表したお蕎麦 。


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サカキノホトンブ様ブログより引用させて頂きました


並木やぶそばのおかめはとってもシンプル 。


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TOKYOWIS様より引用させて頂きました


今では豊富な具材を使用するお店が多く 、 いわゆる「 かやく蕎麦 」とも言えなくは無いでしょう。



火薬ではありませんよ   ( 解るわ )



田舎蕎麦



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本来田舎蕎麦とは玄蕎麦挽きぐるみの色黒お蕎麦 。


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木の家・天守閣自然公園様の公式ブログより引用させて頂きました


しかし昔ながらの町のお店では山菜や茸などの山の幸を具材にした素朴なお蕎麦のことです 。


さて関西でもポピュラーな 、 かちん


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ぐるなび そばよし様から引用させてもらいました


かっちん や 力蕎麦 とも言われるお餅が入ったお蕎麦 。
関西では力餅と言う名のお店が有名 。


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道頓堀今井様ホームページより引用させて頂きました

出汁の今井では焼き餅で出される 。


ハイカラ は天かす ( 揚げ玉 )が入った蕎麦で 、 京都ではこの餡かけが たぬき と言われます 。


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どこもぐ様から引用させて頂きました


おぼろ は恐らく関西のお蕎麦かもしれません 。
おぼろ ( とろろ ) 昆布を載せたダブル出汁的お蕎麦 。


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KoocPad様より引用させて頂きました


熱々のお出汁にトロッとなった昆布の旨味が広がります 。



江戸蕎麦の粋の一つが 花巻蕎麦


岩手県花巻市のお蕎麦 ・ ・ ・


        ではありません !


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出汁ソムリエ1級様の画像を引用させて頂きました


昔 、 浅草海苔のことを波の花といい 、 それを丼一杯にまき散らしたお蕎麦のことです 。

かけ蕎麦にさっと炙った海苔をそのまま 、 または揉み海苔で載せた磯の香りを楽しむお蕎麦で 、 江戸ならではの粋さを感じる一品 。


江戸蕎麦の粋さと言えば江戸前で捕れた青柳 ( バカ貝 ) の貝柱をあしらったお蕎麦が あられ


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ぐるなび石月様から引用させてもらいました


載せられた貝柱があられに似ているためこの名が付きました 。

この貝柱を三つ葉などと掻き揚げにして蕎麦に載せると小柱の掻き揚げ蕎麦 です 。
かき揚げも美味しいですよね 。


さあいよいよ○○南蛮 (なんばん) というお品書きへ 。
  ( お店によっては なんば と呼ばれたりする )


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昔のお蕎麦になかった肉類やカレーなどと合わせたお蕎麦のことを南蛮渡来に例えて南蛮と呼ばれたと言われる説 。

他に大阪の地野菜であった難波葱が入っているのでなんば( 難波 ) 蕎麦という説などがあります 。

肉なんは肉蕎麦 、鶏なんは鶏蕎麦 、 カレーなんはカレー蕎麦で 、 天羅蕎麦のことを「天なん」と呼ぶお店が多いのを覚えておいて下さいね。


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これは鴨南ばんの蕎麦無しで鴨抜きです

ちなみに私は鴨なんが大好きです 。


最後に 巣ごもり というのがありますが 、 これは中華で言うところの餡かけ焼きそば的なものです 。
(中華同様かた焼き蕎麦バージョンも有ります)



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一茶庵 片蔵英統様のブログより引用させて頂きました


お蕎麦の具がお酒のお供として楽しめるという一品ですが 、 最近ではお品書きに載るお店は少ないですね 。


いずれにせよお蕎麦の楽しみ方というのはいっぱいあって 、 江戸蕎麦文化は季節や素材によって 、 色んなお蕎麦をそれぞれの楽しみ方で食べてきたのでしょう 。


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関西でもあられや花巻など江戸蕎麦の代表と言えるお蕎麦を楽しめるお店があるので、ネットなどで探してみて下さい。


少し解りにくい名前がお品書きに並んでいたときは 、 遠慮無くお店の人にどんなお蕎麦なのかを尋ねましょう。


次回は蕎麦屋の酒肴についてお届けします 。

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2017年11月26日 (日)

ざる ? もり ? せいろ ? 冷たいお蕎麦の呼び方って?

お蕎麦屋さんのメニューを見ると 、 冷たいお蕎麦に 「 ざる蕎麦 」 「 もり蕎麦 」、はたまた 「 せいろ蕎麦 」 などお店によって様々な名前が存在する 。
この並列標記に戸惑った方も多いと思いますが 、 これらの違いはいったい・・・
 何 ?

と言うことで今回はお蕎麦の呼び方について少しお話ししましょう 。



普通 、 冷たいお蕎麦の呼び方で圧倒的に多いのが
ざる蕎麦で 、 食堂やそば ・ うどん屋さんなどではこう呼ばれるのが普通ですが 、


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地域によっては 「 もり蕎麦 」 と表示するお店もあって、しかもすごくややこしいのがこれら二つを併記しているお店だ

そこでまずお伝えしたいのが、今は一般的に
「ざる蕎麦」 は海苔が掛けられ、 「もり蕎麦」 には海苔が無い !
なのでもり蕎麦の方がざる蕎麦より値段が安い!!
(お店によっては希に逆パターンも存在するのでご注意)


・ ・ ・ それじゃ 、 それじゃ 、    それじゃ

   いったい
「せいろ蕎麦」には何がのっているんだ!!

   ・ ・ ・ 何ものってません!!!
(藪そばなどのようにお店によっては、ざる蕎麦の事をせいろと呼ぶ所もあります)



さて、ここから
本来の使い分けをお伝えしましょう。

実は三種類の名前というのは、お蕎麦が盛られた
器の違い によるものなのです 。


昔ながらの食堂やそば・うどんの看板が掛かった市井のお店で出されるざる蕎麦の器と言えば丸や四角のこんなの。

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でも本来 「 ざる蕎麦 」 と呼ばれたのは


       
これだ !

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竹などで編んだ まさに笊 に盛られるのが「ざる蕎麦」だった。

では「もり蕎麦」とはどんな器に入っているのでしょう。
江戸時代には浅い小鉢の陶器に盛られた物が 「 もり蕎麦 」と呼ばれたらしい。
( まあどんな器にでもお蕎麦を盛るからもり蕎麦ですが、諸説有り )



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余談ですが 、 気の短い職人が多い江戸ではお蕎麦をいちいち浸け汁に付けるのがまどろっこしくて 、 出されたらさっと食べられるよう 、 浅めの鉢に盛られたお蕎麦にあらかじめ盛り汁を掛けた物が出回ります。 いわゆる 「 ぶっかけ 」 と呼ばれるお蕎麦ですね 。   これが丼に入り熱い汁が張られたかけ蕎麦の原型となるそうです 。 ( これも諸説有りますが )



さあいよいよお題は佳境に入り 「せいろ蕎麦」 とは   です 。



「 せいろ 」 とは食材を蒸気で蒸す時に使う調理道具
ですが 、 実は昔このせいろでお蕎麦を蒸していた時期があり 、 薬屋さんやお菓子屋さんなど 「 蒸籠 」 を使うお店でお蕎麦が出されていたのです 。

京都の老舗蕎麦店 「 尾張屋 」 や 「 河道屋 」 は蕎麦粉を使ったお菓子を出す菓子屋さんだったのは有名ですよね 。
( 今でも蕎麦ぼうろや板そばなどを販売しています )


また屋台や振り売りで供されることが多かったお蕎麦は 、 時間が経つと品質が低下するため蒸籠蒸しされて売られていと言う説も有るようです 。


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              ( 写真はまだ二斤が有った頃のちく満のせいろ箱 )



これがせいろ蕎麦という名の由来です 。

メニューはせいろ蕎麦だけという堺の「ちく満」は 、 創業以来300年以上にわたりせいろ蕎麦(熱盛りそば)を守り続けている 。
( 大阪 、 特に泉州ではせいろや熱盛りが今でも人気メニューなのです )


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ここでざる蕎麦の器に戻りますが、このせいろの器が変化して今でもよく見かけるざる蕎麦の器として残っているのです。
「せいろ」、もしくは「せいろう」と呼ばれるお蕎麦は蒸し蕎麦の名残と言えます。

陶器の器が水切りに優れたざるに変わり 、 昔ながらのせいろは形を変えて今でもあちこちで利用され、こうして
「 ざる 」「 もり 」「 せいろ 」 の名が今日のメニューに残ったと言うことになるのでしょうね 。



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でも一番大事なのは 、 呼び名よりもお蕎麦本来の美味しさが肝心なのですよね 。

以上私が知る範囲でのお話ですが 、 お蕎麦の文化は多岐にわたるため 、
器だけでは収まりきれない物があります 。


いずれ少しずつお話しすることにいたします 。


とりあえずお品書きの謎をお伝えしました。


今度は器では無く 、 器に入るお蕎麦の種類をお伝えしたいと思いながら 、
これでこの日の幸せ終了です 。

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2015年1月17日 (土)

冬の寒い日にはこんな蕎麦も 釜揚げ蕎麦

皆様は釜揚げそばをご存知でしょうか。
今期は年末から結構寒い日が続いていて、特に年始にかけては厳冬と言っても過言では無かったかもしれません。
そんな寒い日には釜揚げ蕎麦などは如何でしょうか。
釜揚げと言えばおうどんが一般的ですが、お蕎麦にも釜揚げという食べ方があり、蕎麦処出雲でも割子に次いでの人気メニュー。

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釜揚げ同様熱いお蕎麦を熱い汁で頂く熱盛り蕎麦というのが有るのですが、熱盛りは一度水締めしたお蕎麦を再度温めて湯切りされせいろに盛り出されます。

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対して釜揚げは茹でたての蕎麦を茹で汁が張られた丼などの器に入れられるのです。
熱々茹で汁にタユタユと泳ぐお蕎麦は、湯気と共に立ちのぼる香りがムンとくる一品。

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そんな釜揚げ蕎麦ですが、三通りの食べ方で出すお店が有ります。

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濃い目の蕎麦汁を器に直接注ぎ入れて頂くのが本場出雲風
掛け蕎麦のように食べることになります。

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もうひとつは器からお蕎麦を取り、熱々汁に浸けて頂く一般的なもの
これはざる蕎麦風に食べる物です。

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最後にマイお釜がテーブルに出され、自分で一度に食べる分だけを湯がき熱い汁に浸けて頂く。
正に釜揚げ

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どれも熱々でお蕎麦を頂く事には変わり有りません。

蕎麦湯は手元の丼などに有る訳ですから飲み放題!!。
ホッコリと体を温めることが出来るお蕎麦の食べ方なのです。

未経験の方は一度お試し有れ。

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2013年3月10日 (日)

熱盛りという不思議で伝統ある蕎麦

お蕎麦には熱盛りというものがある。
一般的には茹でた蕎麦を水締めして再度熱湯に通す、いわゆる熱いもり蕎麦。
これを溶き卵に注いだ熱い汁に浸けて頂く。
関西圏、特に大阪では品書きにその名が多い。
また関東でも「せいろを湯通しで」と頼めば出してくれるお店がある。

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今回は熱盛り蕎麦特集。

3_up_4熱盛りといえば堺にある専門店「ちく満(ま)」があまりにも有名。
創業約300年とも言われる老舗蕎麦店なのです。

白木の蓋付き蒸籠で出される蕎麦はまさにミスターせいろ蕎麦と呼べるでしょう。

では何故わざわざ熱いもり蕎麦なのか
お蕎麦の香りは繊細なので冷たいと隠れてしまい、口に入れ噛みしめると鼻孔の奥に現れる恥ずかしがり屋。
それを温めてやることでモワッと香が広がり、冷蕎麦とは一味違う美味しさを楽しめるのです。

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栄養価の高いお蕎麦を温かくすることで軟らかく滋味有るものにしたのかも知れません。
その味を引き立てるのが鶏卵。もちろん玉子無しのお店も有るのですが基本はこれ。
そして最大のポイントが蕎麦汁なのです。

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6__2 というのも熱盛り蕎麦は麺・汁・玉子が渾然一体でなければなりません。
甘味が過ぎるとしつこくなり、辛すぎれば玉子の円やかさがスポイルされる。
この塩梅が好みを分けるのではないでしょうか。

同じ堺にある「ちく千」や熊取の「よしの」はこの塩梅をより良く活かしていると思う。
しかも「よしの」ではお店が絶妙に仕上げた汁を出してくれるのです。

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また鴨せいろを湯通しで出すお店が和歌山の更科本店。

鴨汁なので卵は付きませんが、熱々のお蕎麦を葱タップリの鴨汁で啜り上げれば、寒い冬でも体がホカホカなのです。

ちく満に似ている京都竹邑庵太郎敦盛も葱タップリの汁で頂く。

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最後に蕎麦湯、またこれが一味違います。
食べ終えた汁に熱々の蕎麦湯を注ぎ入れると、フワッと玉子の花が咲いてまろんとした味わい。
月見蕎麦の汁か、半熟玉吸いになるかは汁と蕎麦湯の温度が分かれ道 (^0^)

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蒸し器を使う菓子店や薬店では昔お蕎麦を出していたとか、蕎麦は足が早いので蒸して出したという説もあり、いずれにせよ熱盛りの基礎はその頃に出来たのでしょう。
今は器の違いで呼び分けられる事の多いお蕎麦
蒸籠で蒸された事から呼ばれる「せいろ蕎麦」。

お店の方が言った一言。
子供の頃からざる蕎麦と言えば熱盛りやった

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これが浪花の蕎麦文化。

近いうちに釜揚げ蕎麦をお伝えしようと思います。

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